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2017.07.17
その常識のウソ・ホント(1)「養育費はそのうち払われなくなる?」

その常識のウソ・ホント

離婚のご相談にみえる方の多くの方が「養育費なんて、どうせそのうち支払われなくなるんでしょう」とおっしゃいます。そのような報道や統計に接する機会があるようですね。
養育費が支払われなくなる理由は主に2つあります。
①養育費の合意が、口頭のものである、あるいは合意がない。
養育費の合意を公正証書(強制執行受諾文言付き)にしておけば、相手の給料その他の資産に強制執行をしていくことができます。もし離婚時に合意ができなくとも、家庭裁判所に養育費請求の調停申立をして、調停の中で合意をして調停調書にすれば同様に強制執行ができます。また、調停で合意に至らない場合は審判にて家庭裁判所によって養育費を決めてもらうこともでき、そうすればやはり強制執行ができます。調停も審判も離婚後でも可能ですので、諦める必要はありません。なお、養育費の金額は、双方の収入に応じ、家庭裁判所の「養育費算定表」または計算式で決めるのが通常です。
②相手が無職である、職を転々として職場が不明である、資産がない。
①に記載したように強制執行が可能な公正証書・調停調書等があっても、強制執行をすべき対象がなければ、それは絵に描いた餅となってしまいます。「職場がどこか」「貯金をどの銀行に持っているか」を調査することはかなり困難です。

上記の①と②の帰結として、では、どういう場合に養育費を取りはぐれないかというと、ア 養育費について、公正証書で取り決めるか、家庭裁判所の調停で合意するまたは審判にて決定された場合で、かつ、イ (職を転々としないだけの)しっかりした会社にお勤め(給与債権に強制執行ができるので)か、または資産(預貯金や不動産)のありかがわかっている場合、ということになります。
特に給与債権の差押えについては、一度差押えをすると、将来分も含め全額を支払わないと強制執行をはずすことができません。例えば月々8万円の養育費を5回滞納し、40万円の不払いとなった場合、一度給与債権に強制執行を受けたら、不払いとなった40万円だけでなく将来分も含め数百万・時には数千万も一括で払わないと強制執行を外せないのです。強制執行を受けてから40万円を支払ったのでは時既に遅し。会社からは「お前は養育費も払ってないのか!人間として最低だ!」と怒られたりすることもあり、踏んだり蹴ったりの状態になることも少なくありません。
つまり、表題の「養育費はそのうち払われなくなる?」に戻りますと、相手が執行可能な財産・定収入を持っている場合に限りますが、養育費について公正証書を作成する・調停で取り決めるという手段をとるか、合意が整わない場合は家庭裁判所の審判で決めてもらう、という方法を取る限り、養育費の不払いは回避できることになります。